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横浜地方裁判所 平成7年(ワ)2513号 判決 1999年8月30日

神奈川県藤沢市片瀬五丁目一二番一二号

本訴原告(反訴被告)

株式会社コフィア・システム

右代表者代表取締役

古知屋真

右訴訟代理人弁護士

福田護

同市片瀬海岸一丁目七番一―四〇七号

本訴被告(反訴原告)

株式会社イースト

右代表者代表取締役

丸山笑子

同市大庭五一四一番地の三

本訴被告

丸山笑子

横浜市泉区和泉町六二〇八―六

グリーンハイムいずみ野一九―五〇四

本訴被告

内田規晴

右三名訴訟代理人弁護士

荒木新五

宮川博史

主文

一  本訴被告らは、本訴原告(反訴被告)に対し、連帯して金一四四二万〇四四二円及びこれに対する平成七年六月一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  本訴原告(反訴被告)のその余の本訴請求及び反訴原告(本訴被告株式会社イースト)の反訴請求をいずれも棄却する。

三  訴訟費用は、本訴反訴ともに、これを三分し、その一を本訴原告(反訴被告)の負担とし、その余を本訴被告らの負担とする。

四  この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。

事実

第一  当事者の求めた裁判

(本訴関係)

一  本訴請求の趣旨

1 本訴被告(以下、反訴関係でも「被告」という。)らは、次の方法によって被告会社とコーヒーサーバー設置契約を締結するよう顧客を誘引し、又は右契約を締結してはならない。

(一) 本訴原告(以下、反訴関係でも「原告」という。)の顧客に関する情報を用い、被告ら自ら又は被告会社の取締役の川口重幸、瀧下匠、神原由美若しくは従業員の田中啓規(以下、それぞれ「川口」、「瀧下」、「神原」及び「田中」という。)をして、被告会社とコーヒーサーバー設置契約を締結するように働きかけ、又は働きかけさせること。

(二) 社名の変更、電話番号の変更、事業所の変更等、被告会社が原告のコーヒーサーバー設置契約に関する業務を承継したものと誤認させる虚偽の事実を告知又は流布すること。

(三) 原告は倒産し、又はその危険がある、あるいは原告従業員が原告を退職する予定であり、又は被告会社に移籍する予定であるとの虚偽の事実を告知又は流布すること。

(四) 被告会社の設立年月日についての虚偽の事実を告知又は流布すること。

(五) 原告が顧客方に設置・提供していたコーヒーサーバーキャビネット、デカンタ、コーヒーウオーマー、飲料ディスペンサーその他の付属品の全部又は一部を、被告会社とのコーヒーサーバー設置契約においても継続使用できるものとすること。

2 被告会社は、原告が顧客方に設置・提供していた1(五)記載の付属品で、被告会社とコーヒーサーバー設置契約を締結するに至っている顧客に現に使用させているものを使用させてはならず、これを当該顧客から受領の上、原告に引き渡せ。

3 被告らは、原告に対し、連帯して金二九七〇万五三五三円及びこれに対する平成七年六月一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

4 訴訟費用は本訴被告らの負担とする。

5 第3項につき仮執行宣言

二  本訴請求の趣旨に対する答弁

1 原告の請求をいずれも棄却する。

2 訴訟費用は原告の負担とする。

(反訴関係)

一  反訴請求の趣旨

1 原告は、被告会社の顧客及び一般顧客に対し、以下のとおりの方法をもって、その取引を妨害してはならない。

(一) 顧客に対し、仮処分決定を示して、被告会社がコーヒーサーバー設置等の営業をすべて禁止されているような誤った印象を与えること。

(二) 被告会社がコーヒーサーバー設置等の営業をすべて禁止されているような言辞を用いること。

(三) 被告会社は問題を起こして裁判中なのでやめた方がよいなどの言辞を用いること。

(四) 被告会社と取り引きをすれば裁判沙汰になりかねない、若しくはトラブルに巻き込まれるかのごとき言辞を用いること。

(五) 被告会社は元は原告であったから、コーヒーサーバー設置契約を原告に戻して欲しいかのような言辞を用いること。

(六) その他被告会社又はその役員若しくは従業員が違法な行為をしているかのような言辞を用いること。

2 原告は、被告会社に対し、金一〇〇〇万円及びこれに対する平成八年二月一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

3 訴訟費用は原告の負担とする。

4 仮執行宣言

二  反訴請求の趣旨に対する答弁

1 反訴請求の趣旨第1項に係る訴え部分を却下する。

2 反訴請求の趣旨第2項の請求を棄却する。

3 訴訟費用は被告会社の負担とする。

第二  当事者の主張

(本訴関係)

一  本訴請求原因

1 当事者等

(一) 原告は、食品類の販売等を目的とし、顧客らの事務所等にコーヒーサーバーを設置し、これを維持・管理すると同時に、当該コーヒーサーバー用のコーヒー粉末、砂糖及びミルク等を供給販売する業務(業界でオフィス・コーヒー・サービス事業といわれているもので、以下、「OCS事業」といい、コーヒーサーバーの設置・維持・管理及びコーヒー等の供給販売を内容とする契約を「コーヒーサーバー設置契約」という。)を行う株式会社である。

(二) 被告会社は、平成七年一月一〇日、食品の販売等を目的として設立された株式会社であり、コーヒー豆等の販売を行うほか、OCS事業も行っている。

(三) 被告丸山笑子(以下「被告丸山」という。)は、平成七年一月三一日まで原告の取締役を務めていた者であり、また、同年一月一〇日に設立された被告会社の設立当初からその代表取締役に就任している者である。

(四) 被告内田規晴(以下「被告内田」という。)は、平成七年二月二八日まで原告の代表取締役を務めていた者であり、被告会社設立当初はその監査役に就任し、その後被告会社のいわゆる顧問として、同社の業務遂行を指導している。

(五) 川口、瀧下、神原及び田中は、原告の営業部開発課又はサービス課に所属していた従業員であり、顧客に対する営業活動を担当していた者であるところ、川口、瀧下及び神原は、被告会社の設立に際しその取締役に就任し、同年二月二日、原告を退社し、田中は、同月一九日、原告を退社するとともに、被告会社の従業員となった。

2 営業秘密の不正使用行為(不正競争防止法二条一項七号)

(一) 顧客情報の営業秘密性

(1) 顧客情報の性質及び有用性

OCS事業にあっては、こまめに顧客の注文を取って納品するなどの日常的な顧客管理、サービス体制を取ることが必要であり、顧客リストを含む顧客情報は、最も重要な営業秘密である。

(2) 管理

原告においては、顧客に関する情報をコンピュータにインプットし、顧客の番号、名称、住所及びルート(原告は、コーヒー豆の補充等のサービスを顧客に効率よくするするために顧客を訪問する際のルートを決めていた。そのルートのことである。以下、「サービスルート」ということがある。)を一覧にした顧客マスター表を作成していた。また、顧客毎の情報をまとめた顧客カードを作成し、サービスルート毎にファイルにして管理していた。

そして、顧客情報のコンピュータへの入力と打ち出しとは、被告丸山と原告従業員の鏡待子(以下「鏡事務員」という。)だけが担当し、顧客ファイルは、ルートセールスマンが各サービスルートに応じたもののみを携出して出社し、帰社すると書庫に戻させるようにしていた。

被告丸山及び同内田は、原告の一〇名弱の従業員に対し、顧客情報を他社に漏らしたり見られたりすることがないよう指導し、原告の就業規則において、「他に漏らしたとき、または漏らそうとしたとき」には、懲戒解雇事由とする旨を定めていた。

(二) 被告らによる不正競業行為

(1) 被告丸山及び同内田は、原告の役員在任中の平成六年一二月にはOCS事業を行う目的で被告会社の設立準備を始め、平成七年一月一〇日に原告と業務内容が同一である被告会社を設立した。

(2) また、被告丸山及び同内田は、平成六年一二月ころから事務所の賃借、電話の架設、コーヒーサーバー及びその付属品の調達、供給商品原材料の調達、契約書・挨拶状その他の必要書類の印刷等の競業準備行為を進めた。

(3) そして、被告丸山及び同内田は、平成七年二月二日には川口、瀧下及び神原を、同月一九日には田中を、原告から退社させ、被告会社に入社させ、自ら及び右の川口らに指示して、(一)の原告の顧客情報を使用して、同年一月三〇日を皮切りに、従前の原告の顧客らと被告会社との間に、短期間に大量のコーヒーサーバー設置契約(同年三月末までで約三三〇台)を締結した(以下「サーバー切替え」という。)。

(4) 被告内田は、平成七年二月末日まで原告の代表取締役の地位にあったにもかかわらず、被告会社による二一八台(二月末までの累計)にも及ぶサーバー切替行為を放置した。

(5) 以上のような準備行為及び多数のサーバー切替えの実行は、被告丸山及び同内田にとっては取締役の忠実義務ないし信義則に違反したものでもあり、被告らは、悪質な不正競業行為をしたものである。

(三) 顧客情報の使用のおそれ

以上のような原告の顧客情報のOCS事業上の有用性、被告らの不正競業目的と実施の事実からすれば、被告らが、原告の顧客らに対し、今後も原告の顧客情報を使用してサーバー切替えに及ぶおそれは顕著である。

3 営業誹誇行為(不正競争防止法二条一項一一号)

(一) 主体の同一性に関する虚偽事実の告知

被告らは、原告の顧客らに対し、原告の社名が被告会社の社名に変更された、電話番号が変更された、事業所が変更された、又は被告会社の設立年月が平成七年二月又は三月である等、コーヒーサーバー設置契約の当事者が原告のまま変わらないかのような虚偽の事実を告知して被告会社へのサーバー切替えをしている。

(二) 原告の経営難に関する虚偽事実の告知

被告らは、原告の顧客らに対し、原告は倒産の危険がある、又は原告の従業員は原告を退職して直ぐに被告会社に移籍するとの虚偽の事実を告知している。

4 損害及び因果関係

原告は、専らOCS事業のみを行ってきた会社であるから、被告らの前記2、3の各行為は、原告の営業全体に対する不正競業行為であって、これにより原告は以下の損害を被った。

(一) 主位的主張

以下の各算定方法による損害額を選択的に主張する。なお、以下の各算定方法では、相当因果関係の範囲内にあるものとして、それぞれ一年分の損害を主張するものである。

(1) 前年の粗利率から算出した損害 金二九七二万六五一〇円

被告会社によりコーヒーサーバー設置契約を切り替えられた顧客ら(以下「本件顧客ら」という。)に対する平成六年一月ないし一二月の各月の原告の売上実績は別紙一(甲一〇七の二を基礎としたもの)、原告の粗利率は別紙二(甲一〇〇)にそれぞれ記載のとおりである。そこで、右の各月の売上実績に各月の粗利率を乗じて算出した各月の粗利益額を一年間を通して加算すると、その総粗利益額は金二九七二万六五一〇円となる。

(2) 変動経費率から算出した損害 金二九五二万円

企業の損益は、総売上高から、人件費・施設設備費等の固定経費及び売上原価等の変動経費を差し引いて計算されるところ、変動経費は売上高と相関があるから、一定期間の実売上高及び実費用額から、変動経費率(売上高が増加する毎に増加する変動経費の割合)を算出することができる。

そこで、原告の平成五年一一月ないし平成六年一〇月(なお、平成六年一一月及び一二月のデータを用いないのは、被告丸山及び同内田が競業準備行為を開始していたなどの理由で費用が異常に膨らんでおり、データとして適当でないためである)の各月の実売上高及び実費用額(売上原価、販売費及び一般管理費の総和)を用いて、統計学上の最小自乗法により、原告における変動経費率を算出すると、別紙三(原告準備書面(六)添付の損益分岐点計算表)のとおり、〇・三三となる。

ところで、別紙一記載のとおり、原告は、被告らの行為により、年間約四四〇七万円の売上高減少を被ったといえるわけであるところ、このうち、売上高減少により変動経費の支出を免れた分は、変動経費率〇・三三を乗じて得られるから、原告に生じた一年分の実質減収は、金四四〇七万円に、一から〇・三三を差し引いた〇・六七を乗じて得られる約二九五二万円となる。

(3) 現実に生じた原告の経営状態に基づく損害 金三二一九万三八四〇円

別紙四(甲一〇九号証添付の表)記載のとおり、原告の平成五年一一月ないし平成六年一〇月の営業損益は月平均四二万三七三七円の利益であったが、被告らによる不正競業行為後の平成七年七月ないし一二月の営業損益は月平均二二五万九〇八三円の損失である。したがって、原告は、被告らの行為により、営業損益で差引月平均二六八万二八二〇円の損害を被ったということができる。そこで、これに一二を乗じて一年間の損害を算定すると、三二一九万三八四〇円となる。

(二) 予備的主張―契約上の地位の譲渡価格相当額 金二三七八万一二〇八円

OCS事業者間では、顧客に対するコーヒーサーバー設置契約上の地位の譲渡が行われることが少なくなく、その場合、譲渡価格は、当該譲渡にかかるコーヒーサーバーの年間粗利益額の八〇パーセントとされるのが通常である。

そうすると、原告が本件顧客らについてのコーヒーサーバー設置契約上の地位を譲渡した場合における譲渡価格は、前記(一)(1)記載の年間粗利益額に八〇パーセントを乗じた金二三七八万一二〇八円であり、これが損害額となる。

5 原告のコーヒーサーバー付属品に対する被告らによる侵害

(一) 原告は、コーヒーサーバー設置契約を締結した顧客らのうち、希望する者に対し、原告所有のコーヒーサーバーを置く台(キャビネット)、コーヒーをろ過するプラスチック製器材(チャンバー)、ろ過・抽出したコーヒーを入れるガラス容器(デカンタ)、ピッチャー、電気式保温プレート(ウォーマー)、コーヒー等を一定量入れておきコックで一杯ずつ入れられるようにする器械(ディスペンサー)、カップホルダー、シュガーポット、ミルクポット等を無償貸与している。

(二) ところが、被告会社は、原告からサーバー切替えをした顧客らに対し、(一)のような付属品を流用して使用させている。その流用品の内容は、

別紙五(甲六九・七〇)記載のキャビネット五四個、デカンタ三九個、ウォーマー三〇個、ディスペンサー五個(以下「本件コーヒーサーバー付属品」という。)である。

6 まとめ

よって、原告は、被告らに対し、不正競争防止法三条、二条一項七号・一一号に基づき、本訴請求の趣旨第1項記載のとおりの方法による顧客の勧誘の禁止を求め、同法四条、二条一項七号・一一号及び不法行為を理由に同第3項記載のとおり連帯して原告に生じた損害金の内金二九七〇万五三五三円及びこれに対する各競業行為又は不法行為の後である平成七年六月一日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による金員の支払いを求め、所有権に基づく妨害排除及び返還請求権に基づき同第2項記載のとおり本件コーヒーサーバー付属品の使用の差止めと引き渡しを求める。

二  本訴請求原因に対する認否

1(一) 本訴請求原因1(一)の事実は認める。

(二) 同1(二)の事実は認める。ただし、被告会社が実質的に活動を開始したのは平成七年二月一日以降である。

(三) 同1(三)の事実のうち、被告丸山が平成七年一月末まで原告の取締役をしていたとの事実は否認し、その余は認める。被告丸山は、平成六年一二月末には原告の取締役を辞任し、その後は平成七年一月三〇日まで原告の一般従業員として原告に在籍し残務整理をしていた。

(四) 同1(四)の事実のうち、被告内田が平成七年二月二八日まで原告の代表取締役を務めていたこと及び登記簿上被告の監査役に就任したと記載されていることは認め、その余は否認する。

被告内田は、被告会社の業務遂行を指導していない。

(五) 同1(五)の事実は認める。

2 同2の事実は否認する。ただし、被告会社の設立時期、被告会社の設立準備並びに川口、瀧下、神原及び田中の原告からの退社時期及び被告会社への入社時期の外形が原告主張のとおりとなったことは認める。

3 同3の事実は否認する。

4 同3冒頭の因果関係に関する事実は否認する。

(一) 同4(一)の各算定方法は争う。

(二) 同4(二)の事実は否認し、主張は争う。

5(一) 同5(一)のうち、原告が現在もコーヒーサーバー付属品を所有していることは否認する。

(二) 同5(二)の事実は否認する。

6 同6の主張は争う。

三  本訴抗弁

1 退職従業員の競業行為の正当性(本訴請求原因2に対し)

被告丸山は、原告の取締役であったとはいっても、実質的には一従業員に過ぎなかったのであり、平成六年一二月末には原告取締役を辞任した。したがって、その後は被告丸山の競業行為が禁止されるものではない。

また、本件においては、被告丸山の退職は、原告の親会社オーナーである岩田利久(以下「岩田」という。)が、別のOCS事業者であるカナディアン神奈川という企業を買収して原告と競業を開始したことに起因するものであって、被告丸山の退職後の競業行為に何ら信義則に反するところもない。

2 コーヒーサーバー付属品の所有権喪失―贈与(本訴請求原因5に対し)

コーヒーサーバー本体と異なり、コーヒーサーバー付属品は顧客らがOCS事業者からもらい受ける慣行となっている。原告も、本件コーヒーサーバー付属品を顧客らに贈与し、その所有権を失っている。

四  本訴抗弁に対する認否

1 本訴抗弁1の事実は否認する。

被告丸山は、平成七年一月三一日まで、原告から一貫して賃金でなく取締役報酬を受けていたものであって、同日まで実質的にも原告の取締役であった。

2 同2の事実は否認する。

(反訴関係)

一  反訴請求原因

1 原告は、被告らが原告の業務を妨害しているとして、その差止めを求める仮処分を当庁に申し立て、平成七年五月一八日、本訴請求の趣旨第1項と同旨の仮処分決定を得た。

2 しかるに原告は、元原告の顧客であった者であると否とを問わず、被告会社の顧客らに対し、右仮処分決定を悪用し、右仮処分決定によってあたかも被告会社の営業活動が全面的に禁止されているとか、被告会社と取り引きすれば裁判沙汰になりかねず、トラブルに巻き込まれるとか、被告会社は元は原告であるからコーヒーサーバー設置契約を原告に戻してほしいなどの言辞を用い、さらに被告が取引行為をするのが違法であるかのような印象を与えている。

3 言うまでもなく、仮処分決定は、暫定的に決定記載の被告らによる行為の差止めを認めているだけであり、仮処分決定を悪用して被告会社の取引行為を妨害し、原告の顧客拡大を図ることは許されない。

4 被告会社が、原告の右一連の行為により信用を毀損されたことによる損害は、金一〇〇〇万円を下らない。

5 よって、被告会社は、原告に対し、右一連の行為の差止めを求めるとともに、被告会社の損害金の内金一〇〇〇万円及びこれに対する不法行為の後である平成八年二月一日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による金員の支払いを求める。

二  反訴請求の趣旨第1項の請求に対する原告の本案前の主張

1 被告会社の反訴請求の趣旨第1項中、「一般顧客」との表現は意味が不明であり、「ような言辞」「などの言辞」「かのごとき言辞」といった表現も行為の特定として不十分である。また、第1項中の「仮処分決定」はどの事件の仮処分決定であるか特定を欠き、「誤った印象」というのも主観的評価の問題に過ぎず、請求として不適当である。

2 反訴請求の趣旨第1項は、仮処分決定の存在が前提とされていると考えられるが、本訴請求が棄却されればその基礎もなくなり、仮に反訴請求につき勝訴判決を得ても、その対象たる原告の行為がなくなるから反訴として重ねて請求する意味がない。

3 反訴請求の趣旨第1項(五)記載の原告の行為については、そもそも違法となる理由がなく、主張自体失当である。

4 以上のとおり、反訴請求の趣旨第1項はいずれも請求の趣旨としての特定性を欠くか、訴えの利益がないか、請求自体失当であり、却下されるべきである。

三  反訴請求原因に対する原告の認否

1 反訴請求原因1の事実は認める。

2 同2ないし4の事実は否認する。

3 同5の主張は争う。反訴請求の趣旨第1項が却下されるべきである以上、反訴請求の趣旨第2項はその前提を欠き、棄却されるべきである。

四  原告の本案前の主張に対する被告会社の認否

原告の本案前の主張は争う。

第三  主な争点

一  原告の顧客情報が原告の営業秘密に該当するか。

二  原告を退社した者が退社の前後から設立した被告会社においてした本件の方法による顧客勧誘が不正な競業に該当するか。

三  原告の損害をどのように算定するか。

四  被告らの一定の方法による営業行為を禁止する仮処分を得た原告が顧客に対してこれを援用したとするセールス行為が被告会社に対する営業妨害に該当するか。

理由

第一  本訴関係

一  当事者及び被告会社の設立経緯

1  原告と被告会社の設立時期

本訴請求原因1(一)(原告がOCS事業を営む会社であること)及び同(二)(被告会社が平成七年一月一〇日に設立された会社であり、コーヒー豆の販売の他、OCS事業も行っていること)は当事者間に争いがない。

2  被告丸山と原告・被告会社との関係

(一) 被告丸山は、登記簿上は平成七年一月三一日まで原告の取締役として登記されていたところ、他方でそれ以前の同月一〇日に設立された被告会社の設立時からその代表取締役として登記されている(争いがない。)。

(二) これにつき被告丸山は、平成六年一二月末には原告の取締役を辞任し、原告の従業員として残務整理をしていただけであるから、その後は原告に対して何らかの拘束を受けるものではなく、被告会社の代表取締役に就任したからといって競業違反を問われるものではないかのように主張する。

しかし、被告丸山は、平成七年一月末まで登記簿に原告の取締役として記載されているだけでなく、現実にもその間原告の取締役として原告において重要な役割を担ってきたものである(甲六六から六八、甲九七。証拠により事実が認められる場合には、このように認定事実の前後に証拠を掲記することがある。)。

ちなみに、被告丸山は、平成六年一一月終わりころから時折原告の鏡事務員に対しても「平成七年になってから原告を退社する予定である。」との話を個人的にすることがあったものの、社員全員の前で退職の意向を初めて公式に話したのが平成七年一月二〇日であった(甲六五)。また、被告丸山に平成七年一月に支給された給与額は、一般従業員の神原、田中に比べて著しく多額(基本給で五倍以上)であり、むしろ被告内田の支給額に近かった(甲五一)。そして、原告から支給された役員報酬額が、平成六年一二月と平成七年一月とではまったく変わらないが、同年二月は前月に比べて減少している(甲一〇一の一二、甲一〇六の一・二)。

以上の事実を総合すれば、被告丸山は、登記簿上だけでなく実質的にも平成七年一月末まで原告の取締役であったところ、同日取締役辞任と共に原告を退社した(退社の時期は被告丸山の自認する事実。甲二二、甲九四の一)というべきものと認められる。結局それ以前の同月一〇日から被告会社の代表取締役となっていたから、三週間程は、両会社の役員としての地位が重複していたものである。

(三) よって、被告丸山の原告取締役の終期等に関する本訴請求原因1(三)の事実が認められる。

被告らの本訴抗弁1は、被告丸山が原告の従業員に過ぎなかったことを前提とするものであるところ、右のとおり被告丸山は原告の取締役であったから、被告らの右抗弁は採用することができない。なお、従業員でも顧客情報について保護義務があることは後述のとおりである。

3  被告内田と原告・被告会社との関係

(一) 被告内田が原告を退任したのが平成七年二月二八日であること及び同被告がそれ以前の同年一月一〇日被告会社設立と同時にその監査役に就任した旨の登記がされていること(本訴請求原因1(四)の一部)は、争いがない。そして、被告内田は、被告会社設立後、被告会社の活動に関わり、顧客の獲得のための活動をした(甲四〇・四八、乙二三・二四)。

(二) 被告らは、被告内田の役員就任登記は、個人的な協力として名前を貸しただけで実質を伴わないものであると主張するが、被告内田は、前記のとおり、被告会社の業務に関わっていたものである。被告内田の右の主張は採用することができない。

4  被告会社の設立経緯

ここで、被告会社の設立の経緯を検討しておくが、証拠(乙二一及び二四)によれば、次の事実が認められる。

原告は、平成二年に、湘南ベンディング株式会社(以下「湘南ベンディング」という。)のOCS事業部が独立して法人組織となったものであるところ、被告内田は、その際原告代表取締役に就任し、被告丸山の協力を得て、実務面を担当し、従業員としては六名程度の者を有し、OCS事業の販路の開拓と維持確保に努力をしてきた。ところが、湘南ベンディングの代表取締役であった岩田が、平成六年九月ころ、原告と同業種のカナディアン神奈川という企業を買収して、湘南ベンディングのOCS事業部として発足させるので、原告の顧客を二〇件程湘南ベンディングに移設するように指示してきた。被告内田及び被告丸山は、同一グループ企業内に同種の部門を担当する二社があることは有害であるということ、これまでの原告における被告丸山らの担当者の努力が失われること、以上のような見地からこれに反対した。しかし、岩田に理解して貰えないとして、被告丸山が原告を退社する決意を固め、退社後はコーヒー豆を売る会社を起こし、生花の販売や喫茶店も先々やりたいという意向を示し始めた。岩田は、このような被告丸山の動向を知り、「自分に対する挑戦と思う。やらせてはだめだ。被告内田の力で止めさせるように。」と被告内田に述べたが、被告内田は、「それはできない、むしろ被告丸山の新しい人生を応援したい。」と述べて、自身も岩田と衝突するところとなり、その結果、原告を退社し、被告丸山に力を貸したいと述べることになった。そうしたところ、被告丸山が、平成七年一月一〇日に被告会社の設立登記をするに至り、被告内田に被告会社の監査役を依頼し、被告内田はこれを受けることとなった。ただし、被告丸山は、被告内田に迷惑がかからないように、直ちに被告内田から夫の丸山幸男に被告会社の監査役を変更した。また、被告丸山の以上のような退社の意向を聞き知った原告の従業員の多くの者(川口、瀧下、神原及び田中)が被告丸山が退職するなら自分たちも止めたいという強い意向を表明することとなった。被告丸山はこれに消極的であったところ、川口らは被告丸山に対し、資金を持参して是非参加させて欲しいと希望したため、次の5のとおり、これらの者も被告会社に参加することとなった。

以上の事実が認められるのであり、被告内田は、事情を知らずに設立当初の被告会社に監査役として名を連ねたものではなく、事情を知りながら、被告会社の業務を少なくとも妨害せずに、助長したものということができる。

5  川口、瀧下、神原及び田中と原告・被告会社との関係

標記の者は原告の従業員であったところ、被告会社設立から程ない時期に原告を退社し、直ちに被告会社の取締役(川口、瀧下及び神原の場合)又は従業員(田中の場合)となった(本訴請求原因1(五)―争いがない。)。その経緯は、4記載のとおりである。

被告らは、川口、瀧下及び神原の役員就任登記は、個人的な協力として被告会社に名前を貸しただけで実質を伴わないものであると主張するが、右の者らは、4のとおり、被告丸山に同調する意向を示し、資金を用意して参加を希望してきたものであり(乙二一)、また、被告会社においては、平成七年一月ころから、すでに、川口、瀧下及び神原が営業を行っている事実が認められるから(甲四、甲九の一ないし五、甲四三・四四、甲四六の三・四、甲四七)、被告らの主張は採用することができない。

二  原告の顧客情報の被告会社による使用

1  OCS事業と顧客情報

OCS事業は、企業のオフィス等にコーヒーサーバーを設置し、コーヒー豆を補充する方式の事業である。ところで、顧客となる事業所は、コーヒー愛好者が多くいても、OCSを使わずに、事業所の職員自身でコーヒーを作ることもあるから、そのような顧客候補の事業所にOCSを導入するように勧誘して顧客を獲得するには、OCSのセールスが不可欠で、相当の営業努力を要するものであることは容易に推認されるところである。

したがって、獲得した顧客がどういう事業所かという情報自体が極めて重要なものであり、そのような顧客情報はOCS業者にとっては営業秘密に該当し得る性格のものといってよい。しかも、右の情報がそのような性格のものであるため、その情報の形態は、名簿やコンピュータに記録されたものでなくてもよく、セールスマンの記憶の中に残されているものでもよいと解される。

2  本件における顧客情報の内容と秘密性

(一) 証拠(甲六三・六四、甲七四の二)によれば、原告においては、顧客ごとに管理カードが作成され、これが販売ルートごとにファイル化されて保管されるとともに、顧客情報のコンピュータ管理がされ、コンピュータへの入出力は概ね鏡事務員のみが行い、99ルートと呼はれる販売ルートについてのみ、被告丸山がこの入出力を行っていた事実が認められる。

ただし、原告従業員は定期的に顧客方にコーヒー豆の補給に訪問するから、このような業務を通じて従業員が体験的に知った顧客情報も、コンピュータ管理されている顧客情報と同様に重要であるということができる。証拠(甲三〇)によれば、原告においては顧客情報の提供に奨励金が支払われるなど、顧客情報が尊重されていた事実が認められるが、このことからも、顧客が誰かということ自体が重要な情報であることが判明する。

(二) また、証拠(甲二八・二九・九〇)によれば、原告においては、被告丸山及び被告内田を除くと従業員が六名程おり、湘南ベンディングの就業規則が準用され、その一三条二項に服務規律として「社員は自己の職務に関して知り得たこと、他の社員から聞知したことをとわずすべて会社または会社の取引先の秘密を外部に漏らさないこと」と定められ、これを含む服務規律違反は懲戒事由とされ(同規則六三条一五号)、「業務上の重要な機密を他に漏らしたとき、または漏らそうとしたとき」には、特に解雇事由とまでされている(同六四条九号)とともに、甲六三によれば、原告においては、被告内田及び同丸山自らが、原告の顧客名簿等は他社に漏らしたり見られたりすることがないようにとの注意指導を朝礼において訓戒するなど、右の注意を周知徹底して指導していた事実が認められる。

(三) したがって、原告の顧客情報は、性質上及び原告における取扱上、原告の営業秘密に該当するというべきである。

3  営業秘密の保持義務

株式会社の取締役や従業員は、会社の営業秘密は性質上当然遵守すべきであり、そのことは、取締役の場合はその忠実義務(商法二五四条の三)及び善良な管理者の注意義務(商法二五四条三項)から、従業員の場合には就業規則からも導かれるところでもある。

そして、このような営業秘密の遵守義務は会社を退任した後もある程度の期間は継続すると解するのが相当である。そうしないと、取締役の退社と同時に営業秘密が要保護性を失うことになるが、それは、あまりに不合理だからであり、不正競争防止法二条一項七号もそのことを前提としている。

4  顧客情報を利用した競業行為

(一) 顧客の切替え

被告会社設立後程なく、原告の顧客のうち被告会社の顧客に移転したものがあり、その数は、少なくとも一旦は切り替えられたコーヒーサーバーの数で見ると、平成七年二月中に二一六台(甲一三・一〇七)、同年三月中に一一八台(甲一五・一八)、同年四月中に三一台(甲三二)、同年三月一三日までに遠隔地の顧客にかかる一七台(甲八・一六)、同年五月一日から平成八年一一月二九日までは二三台(甲七一)であり、合計四〇五台となる。

ところで、これらのコーヒーサーバーの中には、その後被告会社から原告に再切替契約がされたものがあり、内訳は、平成七年二月中に再切替えのもの二四台(甲一四)、同年三月再切替えのもの一六台(甲一九の一・二)、同年四月から平成八年三月までに再切替えのもの三二台(甲七二)及び遠距離の顧客再切替分一七台(甲一六)の合計八九台である。

切替分から再切替分を控除すると、三一六台となる。

(二) 顧客切替えと顧客情報の使用

(1) (一)前段記載の顧客の切替え(顧客から見るとサーバーの切替え)については、被告会社設立後比較的短期間内にかつ大量にされており、原告の営業秘密である顧客情報(以下「本件顧客情報」という。)を被告会社の者が利用してそれらの事業所に赴き、セールス活動をしなければできないことであると解される。そして、被告らの中で、このような方法で顧客の獲得を担当したのは、被告会社の代表者となった被告丸山、被告会社に参加した川口、瀧下等の従業員であり(甲八ないし一一、甲二〇、甲三三の一、甲四七・五六)、被告内田もこれを担当したものである(乙二三の八項)。

そうすると、これらの行為は、それぞれの者の原告退社後半年も経たない間のことであるから、営業秘密の保持期間内の秘密使用行為に該当するといわなければならない。

しかも、被告の事業がOCSを含むものであるから、本件顧客情報の使用は、設立直後の被告会社の販路獲得のためであることにあるのは明らかである。

(2) 被告らは、被告丸山の個人的人脈を用いて被告会社の営業活動を行ってきた旨主張するが、会社設立後短期間にコーヒーサーバー設置契約を締結した数百台に相当する顧客らについて、すべて被告丸山の個人的人脈であるとは考えられない。のみならず、もともと原告とコーヒーサーバー設置契約を締結した契機が原告に勤務していたころの被告丸山との個人的人脈にある顧客についても、その後原告との間にコーヒーサーバー設置契約が維持されてきたのは、原告において当該顧客のニーズに合わせたサービスを行ってきたためでもあろうと推認されるのである。顧客からすれば、簡単に取引先のOCS事業者を変更することができるのであるから、それにもかかわらず、OCS事業者を変更しないというのは当該事業者がサービス面で充実していたということを物語ると解するのが相当である。このような当該顧客のニーズに関する情報や、当該顧客に対してサービスを行い醸成してきた信頼関係などの影響も無視できないのであり、その意味では、顧客とした当初のきっかけが被告丸山の人脈にあっても、原告と取引している顧客は、その後の原告としてのサービスに満足していることの影響が大きいと考えられる。

(三) 被告らの違法性

したがって、(二)(1)のとおり本件顧客情報を用いて、被告丸山及び被告内田が自らあるいは従業員を指示してした(一)の顧客の切替行為は、不正の競業その他の不正の利益を得る目的で、その営業秘密を使用する行為であり、不正競争防止法二条一項七号の「不正競争」に該当するというべきである。乙一六号証は被告らがコーヒー豆の小売りも行っていた事実を示すものの、OCS事業の目的があった事実を否定するものではない。

そして、被告丸山が被告会社の代表取締役であるから、被告丸山の違法行為については、被告会社も賠償責任を負う(商法二六一条三項)。

(四) 顧客情報利用時の付加的な行為

被告丸山及び被告内田が自らあるいは従業員を指示してした顧客切替行為に際し、どのようなセールスをしたかの詳細は明らかでない部分も多いが、原告の社名、電話番号又は事業所が被告会社のそれに変更されたとか、あるいは原告が危ないといった虚偽事実を告知し、相手の顧客には同一のOCS事業者と取引をしていると誤解させて、あるいは原告の信用に不安を感じさせ、実は原告の顧客を被告会社の顧客にした事例もあり、その件数は、一五件(台数で計算)程あったことが証拠上窺える(甲八、甲九の一から五、甲一〇の一から四、甲一三)。前者は欺罔手段による競業であり、後者は真実性の証明がないと「競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実の告知」(不正競争防止法二条一項一一号)に該当しかねない行為である。しかし、このようにして切り替えられた顧客はその後直ちに原告の顧客に再切替えされており(甲一四、甲一九の一・二)、原告はその分については別紙一において損害賠償の請求をしていない。したがって、過失相殺を含む損害賠償について検討するときは、違法行為としては、この類型のものを検討する必要はなく、単なる顧客情報の不正使用という類型だけを検討すればよく、被告会社に切り替えられ、その後原告に再切り替えされていないものについて、顧客情報を使用したことによる損害賠償を検討することになる(ただし、後記のとおり原告主張の約三〇〇台中にその後原告に再切替えされたものがあり、その点につき控除することになる。)。

5  他の違法行為の有無及びその位置付け

証拠によれば、平成六年一一月ころから平成七年一月まで、訴外摂津クリエイト株式会社に対する原告のプライベートブランドコーヒー(原告の特注商品)の注文量が目に見えて増大し(甲八五)、原告における平成七年一月ころの棚卸高が極端に増え、同年二月以降の粗利率が落ち込んでいること(甲八二ないし八四)、また、株式会社きものアート室町について、原告とのコーヒーサーバー設置契約が解約された後も原告名で納品が続いている事実(甲七八ないし八一、甲一〇九)が認められる。これらの事実により、被告丸山が、原告を退任する前の平成六年一一月ころから、原告の計算において大量に仕入れた商品を被告のために使用したのではないかと原告は主張し、そのような疑いもできないではないが、刑事責任に及ぶような事柄の重大性に照らすと、より直接的に認定するための証拠が必要であり、それがない以上、右の証拠により直接明らかにされる事実以外の事実を右証拠により認定するのは困難である。

また、証拠(甲八六の一ないし四)によれば、被告丸山が、原告の計算に帰属させられる被告内田名義のクレジットカードを使用して婦人用衣料を購入した事実が認められる。しかし、この点に関し、被告丸山はその代金を原告の代表者であった被告内田に支払った旨を供述し(甲九〇の三三頁)、また、競業者に顧客を奪われないようにするために顧客には贈答品を提供したりする商慣習もあるようであり(同三四頁等)、それらの事情に照らすと、右の被告丸山の行為を横領的な行為と即断することも相当でない。

したがって、本件では、違法行為としては、原告の顧客情報の不正使用を捉えることをもって相当とするものである。

三  本訴の差止請求の当否

1  本訴請求の趣旨1(一)の差止請求について

標記の差止請求は、原告の顧客情報を用いて原告の顧客に勧誘をしてはならないことを求めるものであるが、後記2以下と同様に現時点で「顧客」の具体的な氏名が不明であるので、その意味で請求は理由がないといわざるを得ない。

2  本訴請求の趣旨1(二)から(四)の差止請求について

標記の請求は、虚偽事実を告げて顧客を欺罔し、あるいは原告の信用を毀損するような勧誘行為の禁止を求めるものであるところ、現時点での「原告の顧客ら」が具体的に誰を指すかが明らかでないため、仮に差止めの裁判があってもその違反の有無が判断できず、執行も困難となる。

原告らとしては、「顧客」を開示すると、それにより被告らに原告の顧客情報が伝わるのでそのことをおそれ、顧客名を開示することに困難を感じるのであろうが、原告自身も自認するように顧客の変更が短期間に頻繁になされることも多い業種であることをも踏まえると、本件口頭弁論終結時において原告の顧客であることを具体的氏名をもって主張立証していない者に対する被告らによる勧誘行為の差止を求める請求は、許されないといわざるを得ない。

3  本訴請求の趣旨1(五)の差止請求について

標記の請求は、原告の顧客の下に置かれるのが通例であるコーヒーサーバーの付属品について、被告らが当該顧客を被告の顧客に切り替えたときにそれまで原告の顧客の手元にあった付属品をそのまま被告会社の管理の下に顧客に使用させることの差し止めを求める訴えである。

これについても、前記2の場合と同様に「原告の顧客ら」の具体的氏名の主張立証が不十分であり、排斥せざるを得ない。

四  損害賠償(本訴請求の趣旨第3項)について

1  基本的な論点の整理

二4(一)で述べたとおり、被告丸山及び被告内田が自らあるいは従業員に指示するなどして本件顧客情報を用いて原告の顧客を被告会社の顧客に切り替えたところ、その行為は違法な競業行為と考えられるものである。そして、原告が請求するのは、これらの切替えにより原告の顧客が被告会社の顧客になったことによる原告の売り上げ損を原因とする損害賠償請求であり、切り替えられた顧客というのは別紙一に記載の顧客であるとのことである。この顧客らは、前記二4(一)による再切替えのあった顧客を除いた顧客に相当する。

ところで、本訴における原告の請求後に被告会社から原告に再切り替えされた顧客があるので、その分をさらに減額する必要がある。

また、原告は、損害の計算方法について、複数の方法を主張しているが、売り上げから売上原価を差し引く主位的請求の第一の方法によることに格別の不都合はない。第二の方法による方が人件費などが売上原価と同様に売り上げに連動するような職種の場合には、より確度の高い数値を求めることが可能となる場合もあるが、本件では、経費(売上原価を除く。)が売上げに連動するとの証明が十分でない面があるので、第二の方法によるよりも端的に第一の方法によることが相当であると解する。また、第三の方法によるときは、算出される損害と原告の得べかりし売上げの喪失による損害との関連性が希薄になる点が相対的に問題であり、第一の方法によるより合理性において劣るということになる。

なお、被告丸山らによる本件顧客情報の使用により原告が被ったものが損害であるところ、売り上げが得られなくなったことにより原告の売上原価も不要となったので、損害の算定においてはこれを減額する必要が生じるが、原告の売り上げが得られなくなっても原告の人件費は必要であるから、原告の人件費を控除する必要はない。粗利益を損害として捉え、純利益を損害として捉えないことの理由は、以上のような考え方によるものである。

2  再切替後の売り上げの控除

そこで、まず1の前段に指摘の原告へのサーバー切替え(再切替え)の顧客分を控除することが必要となる。この点に関し、証拠(乙四六ないし四八)によれば、原告から被告会社にサーバー切替えをされた顧客らのうち、以下の顧客らについては、サーバー切替後一年以内に再度原告にサーバー切替えがされたものと認められるので、損害額算定の期間を、被告会社にサーバー切替えがされていた期間に限り、原告に再切替えされた後の売り上げは損害から控除すべきこととなる。

そして、サーバー切替後一年以内に再度原告にサーバー切替えがされたものと認められる顧客らは以下のとおりである。各顧客名の上の括弧内の番号は別紙一の顧客番号、括弧の後の年月日の記載は被告会社の顧客であった期間であり、甲一三・一五・三二、乙四六ないし四八により認められるものである。また、その後に記載の数値は、平成六年の当該顧客それぞれの一日当たり平均売上金額に右の被告会社の顧客であった期間を乗じた金額である(小数点以下切捨て)。これが、これらの顧客に係る売り上げ損であり、該当する顧客についての別紙一1の右端の「切替後の推定売上減少額」欄に記載の金額となる。

(9) 有限会社フラワーオート本店

平成七年二月六日から同年一二月一四日

四万一九二一円÷三六五日×三一二日=三万五八三三円

(13) 横浜日産モーター株式会社鎌倉

平成七年二月六日から同年一〇月一三日

五〇万七八五〇円÷三六五日×二五〇日=二四万七八四二円

(19) 横浜市大細菌学

平成七年二月六日から同年一〇月三一日

七万六六六八円÷三六五日×二六八日=五万六二九三円

(29) カトレヤ深津

平成七年二月六日から同年一〇月五日

四万三八七八円÷三六五日×二四二日=二万九〇九一円

(30) 有限会社美都衣

平成七年二月六日から同年八月三一日

一〇万一三五二円÷三六五日×二〇七日=五万七四七九円

(31) トーエイ工業株式会社大船工場

平成七年二月六日から同年九月一日

四万七八八三円÷三六五日×二〇八日=二万七二八六円

(56) マエ美容室

平成七年二月一三日から同年八月一〇日

五万〇三六三円÷三六五日×一七九日=二万四六九八円

(68) ビユーティサロンR

平成七年二月一〇日から同年八月三一日

八万七二五八円÷三六五日×二〇三日=四万八五二九円

(141) ユーノス湘南藤沢南

平成七年二月二四日から同年七月二〇日

一四万五六四二円÷三六五日×一四七日=五万八六五五円

(163) リプル美容室

平成七年二月二〇日から同年八月四日

一一万八三二六円÷三六五日×一六六日=五万三八一四円

(164) 相模ハム藤沢営業所

平成七年二月二〇日から同年九月二六日

四万一六一二円÷三六五日×二一九日=二万四九六七円

(171) 花のギャラリーリバージユ

平成七年二月二一日から同年七月三一日

〇円÷三六五日×一六〇日=〇円

(179) カットスペースイマジン

平成七年二月二二日から同年九月二六日

一六万二七一六円÷三六五日×二一七日=九万六七三八円

(186) 神奈川トヨタ鎌倉

平成七年二月二四日から同年九月一九日

四〇万七七一二円÷三六五日×二〇八日=二三万二三三九円

(209) 横内商会北サービスステーション

平成七年三月八日から同年一〇月一八日

一八万一三八三円÷三六五日×二二五日=一一万一八一一円

(210) 横内商会八重崎サービスステーション

平成七年三月八日から同年一〇月一八日

一四万五五三三円÷三六五日×二二五日=八万九七一二円

(216) 有限会社オクト・バーセブン・カート・ビレッジ

平成七年三月八日から同年九月二六日

三〇万三五三三円÷三六五日×二〇三日=一六万八八一四円

(236) 有限会社正栄プロパン

平成七年三月一五日から同年七月一一日

八万五二六三円÷三六五日×一一九日=二万七七九八円

(270) マルコ株式会社東小田原店

平成七年三月二九日から同年七月一日

一八万四七七七円÷三六五日×九五日=四万八〇九二円

(296) 東洋ハウジング株式会社

平成七年四月一七日から同年七月一五日

一二万一五四〇円÷三六五日×九〇日=二万九九六八円

なお、ミナミ美容室(315)については、証拠(乙四六ないし四八)によれば原告に再度サーバー切替えがされたかのような記載もあるが、その日付が平成七年二月五日となっていて、これは時期的に明らかに早すぎるので、この部分については何らかの誤記である可能性が高く、信用性がないと考えられる。そして、他に原告に再度サーバー切替えがされていると認めるに足りる証拠はないので、再切替えがない事案として、一年分の損害額を算定すべきである。

3  再切替えのない顧客についての損害

原告への再切替えのない顧客については、前年の売上金額をそのまま被告会社への切替後の売り上げ損として評価する方法に相応の合理性が認められるので、このようにして損害を算出すると、別紙一の当該顧客の年間売上額欄記載の金額(切替後の推定売上減少額欄記載の金額と同一)となる。なお、原告が平成六年中に獲得した顧客については、平成六年の一年分の売上金額の実績がないが、そのような場合については、実績のある金額を基礎にして年の売上金額を算出したものをもって充てる。

4  売上原価の控除

ところで、ここでの損害は、本件顧客情報を利用されてサーバーの切替えがされた顧客の売り上げが得られなかったことによるものであるから、その売り上げに対応する売上原価も要しなかったことになり、その分の金額を損益相殺の考え方に従って控除すべきである。そうすると、粗利益は、別紙一の切替後の推定総売上減少額四二七九万〇六二九円に平均粗利益率六七・四パーセント(年全体の総売上金額に対する年全体の総売上原価金額の占める割合を1から控除したもので、甲一〇一の一から一二を利用して別紙六のとおり算出した。)を乗じて算出して得られた総粗利益額二八八四万〇八八四円である。

5  過失相殺

ところで、前記のように被告丸山及び被告内田が本件顧客情報を利用して顧客の切替えを行ったのは、次のような背景があったからである。

すなわち、右被告両名は、湘南ベンディングが原告を独立させるときには資本金の一〇パーセント(被告内田)及び五パーセント(被告丸山)を負担し、原告の代表取締役(被告内田)及び取締役(被告丸山)として、従業員六名ほどを指揮して実質的に原告を立ち上げ、その後約五年間にわたり原告を切り盛りしてきたこと、湘南ベンディングは資本参加をしたが実働には関わっていないこと、そして、原告の役員としての業務はもっぱら右被告両名が担当してきたものであること、ところが、親会社に当たる湘南ベンディングの岩田が、平成六年秋ころに突然合理的な理由を説明することなく、湘南ベンディングのOCS事業部門を独立させ、ここにカナディアン神奈川という企業を買収し、湘南ベンディング傘下にOCS部門を二つ設けるという構想を持ち出してきたこと、かつ、岩田は、その両会社の調整について特段の考えを持っているわけでもなく、その説明もしなかったこと、そこで、被告両名が岩田及び湘南ベンディングに著しい不信の念を抱くことになり、原告にいても展望がないと考えるようになったこと、そして、原告の顧客情報といっても、右被告両名にとっては自分達が作り上げてきた情報という意識を抱く面があること、しかも、右被告両名の意識・意見は両名だけのものではなく、従業員の支持も得られたもので、従業員は被告丸山の消極意見にもかかわらず資金を持ち込んで被告丸山の設立する被告会社への参加を希望してきたこと、以上のような中で、被告会社が設立され、その立ち上げの中で右被告両名が原告の顧客情報を利用したというものであった。

しかも、本件顧客情報というのは、顧客となる事業所を効率よく捜すことのできる情報であるというにとどまり、その情報を得たからといって、直ちに顧客が確保でき、売り上げ増に結びつくわけではない。また、本件顧客情報は、セールスに多少の時間をかければ誰でも自ずと入手できる情報であるので、その情報を取られ、それを利用して顧客の切替えが行われても、再度同じ情報を使って顧客の取り戻し(再切替え)をする可能性も論理的には残されているものである。

以上によれば、本件顧客情報を利用された原告及び原告側に属するということのできるその親会社の湘南ベンディングにも、相当程度の落ち度があるというべきである。そして、本件顧客情報は時間の経過と共に権利性が希薄となるものであり、その不正使用に加え、セールスによる顧客の切替えがあって初めて損害が発生するというものであるから、その不正使用による損害への寄与がやや少ないことになる。そこで、公平の観点をも加味し、過失相殺五割とするのを相当と解する。

6  まとめ

そうすると、原告は、被告らに対し、一四四二万〇四四二円の損害賠償請求をすることができると解するのが相当である。

7  被告らの主張について

(一) これに対して、被告らは、被告会社にサーバー切替えをした後の顧客らについて、実際の売上高を示した上で(乙四六ないし四八)、平成七年以降、不況の深刻化などがあることを理由に原告の損害額が不当であることを主張する。

そこで、この点について検討すると、原告代表者尋問の結果によれば、原告との間で平成七年以降もコーヒーサーバー設置契約を継続している顧客らについては、原告の売り上げはほとんど減少していない事実が認められる。とすると、被告会社にサーバー切替えをした顧客らについて現実に売上高が減少しているからといって、当該顧客らが原告との間でコーヒーサーバー設置契約を継続・更新した場合においても、売上減少があろうとはいえず、原告が右算定額の損害を被ったことを覆すには足りないものというべきである。

加えて、乙四二号証によれば、被告会社が、サーバー切替えした顧客らをさらに別のOCS事業者に奪取されている事実が、甲七七号証によれば、新規のOCS事業者として競争に参入した被告会社が、原告を含む先発の同業者と競争するため、売上単価を同業者より安くしている事実がそれぞれ認められ、被告会社にサーバー切替えをした顧客らについての売上高の減少は、時期的に見ても不況の深刻化という普遍的な現象によってよりも、これら被告会社に固有の事情によってもたらされている面も少なからずあるのではなかろうかと思われる。いずれにしろ、冒頭の被告らの主張は、被告の責任を回避する事由とまでは認められない。

(二) 被告らは、サーバー切替えをした顧客らが現在も被告会社とのコーヒーサーバー設置契約を継続している以上、それは顧客らの自由意思であって、本件情報に基づく顧客の獲得と右の原告の損害との間に因果関係はない旨主張する。

しかし、一旦被告にサーバー切替えをした以上、原告への再度のサーバー切替えにまで及ぶには、原告の側にも顧客の側にも相当のエネルギーが必要となるのは社会通念上当然の事理であって、当初のサーバー切替えに違法がある以上、現在も被告会社とのコーヒーサーバー設置契約を継続しているからといって、その違法と原告の損害との因果関係が消滅することにはならないというべきである。

(三) また、被告らは、競争の激しいOCS事業において、仮に被告らの行為がなかったとしても、原告が、平成七年から現在までの長期にわたって、被告会社にサーバー切替えをした顧客らとの間でコーヒーサーバー設置契約を継続できていたかは疑わしいとも主張する。

しかし、原告は一年分に区切って損害を主張してきているから、この点についても因果関係は維持されているというべきである。なお、甲一一〇号証によれば、原告がコーヒーサーバー設置契約を継続していたとしても、被告会社を含めた他のOCS事業者に顧客を奪取される可能性がある事実は否定はできないが、これと同時に、こうした顧客の数は全体としては僅少であるとの事実も認められ、他方、被告らの不正競業行為がなければ、原告との間で一年以上コーヒーサーバー設置契約が継続した顧客も少なからずいたであろうことをあわせ考えると、以上に述べたような凹凸は増減調整され、損害主張の期間を一年分に区切る限りにおいて、原告の請求は実損害額を超えるものとはいえず、被告らの行為と因果関係のある損害の範囲に含まれるものといい得る。

五  所有権侵害に基づく請求(本訴請求の趣旨第2項の請求)について

1  本訴請求原因5(一)のうち、原告がその顧客らに設置・提供しているコーヒーサーバー付属品を、コーヒーサーバー設置契約締結の際まで、原告が所有していたことは、被告らにおいて争うことを明らかにしないので、これを自白したものとみなす。

2  ところで、本訴請求の趣旨第2項の請求は、別紙五の「デカンタ」等欄に数字の記載されている顧客らが本件コーヒーサーバー付属品を直接占有し又は使用していることを前提とするものであるが、右事実を認めるに足りる的確な証拠はなく、かえって、乙二六号証及び二七号証によれば、別紙五において数字の記載された顧客らの少なくとも一部について、すでに本件コーヒーサーバー付属品を占有・使用していないとの事実が認められる程である。

したがって、その余の点につき判断するまでもなく、本訴請求の趣旨2項の請求は理由がない。

六  結論

以上によれば、原告の本訴請求のうち、差止請求及び引渡請求はいずれも理由がなく、損害賠償請求は一部認容されるべきである。

第二  反訴関係

一  原告は、本案前の答弁として、反訴請求の趣旨第1項の請求について、請求の趣旨の特定を欠くなどとして訴えの却下を求めるが、そうとまではいえないし、被告会社が本案(本訴)において勝訴しても、仮処分決定自体は事情変更による保全取消し(民事保全法三八条)の手続を取らない限り、直ちに失効するものではないから、反訴の訴えの利益を欠くものとはいえない。よって、本案前の主張は採用することができない。

二  そこで、次に反訴の本案について検討するが、証拠(乙五・二三・二四)には、反訴請求原因事実に添う被告内田及び同丸山らの陳述部分があるが、これと反対の趣旨の甲一〇九号証、原告代表者尋問の結果に照らし、反訴請求原因事実を認めることはできない。そして、他に反訴請求原因事実を認めるに足りる証拠はない。

三  よって、被告会社の反訴請求はすべて理由がないから、いずれも棄却することとする。

第三  まとめ

以上のとおりであるから、本訴の損害賠償請求を一部認め、その余の本訴請求及び反訴請求を棄却し、訴訟費用の負担につき、同法六一条、六四条、六五条を、仮執行の宣言につき同法二五九条一項を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 岡光民雄 裁判官 近藤壽邦 裁判官 平山馨)

別紙一

切替顧客売上一覧表(94、1~94、12)<98年4月再確認>

1995.5.31現在

<省略>

切替顧客売上一覧表(94、1~94、12)

<省略>

切替顧客売上一覧表(94、1~94、12)

<省略>

切替顧客売上一覧表(94、1~94、12)

<省略>

切替顧客売上一覧表(94、1~94、12)

<省略>

切替顧客売上一覧表(94、1~94、12)

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切替顧客売上一覧表(94、1~94、12)

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切替顧客売上一覧表(94、1~94、12)

<省略>

切替顧客売上一覧表(94、1~94、12)

<省略>

切替顧客売上一覧表(94、1~94、12)

<省略>

切替顧客売上一覧表(94、1~94、12)

<省略>

切替顧客売上一覧表(94、1~94、12)

<省略>

1998年4月

(株)コフィア・システム

代表取締役 古知屋真

別紙二

1995.7.1

粗利一覧表(94.1~94.12)

<省略>

株式会社 コフィア・システム

代表取締役 古知屋真

別紙三

損益分岐点計算表

(平成5年11月~平成6年10月)

(単位:万円)

固定費をa(万円/月)、変動比率をbとして

<1>∑y=12*∑*b

13,966=12a+14,472*b

<2>∑xy=∑x*a+∑x2*b

16,882,912=14,472*a+17,574,096*b

<1><2>より a=766

b=0.33

<省略>

別紙四

<省略>

<省略>

別紙五

切替顧客附属品流用一覧表(平成7年3月31日現在)―附属品貸与の根拠資料

平成7年2月1日~2月28日切替分

<省略>

<省略>

<省略>

<省略>

<省略>

<省略>

<省略>

<省略>

<省略>

(株)イースト切替分顧客附属品流用一覧表(平成7年3月31日現在)―附属品貸与の根拠資料

平成7年3月1日~2月31日切替分

<省略>

<省略>

<省略>

<省略>

<省略>

(株)イースト切替分顧客一覧表

平成7年3月23日~3月31日

<省略>

<省略>

別紙六

<省略>

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©大判例